武蔵野の草原に立つ

アイドルのライブへ行く趣味について徒然に。

推しにアレルゲンを差し入れてしまったら(経験談が長い)

今回の記事では、私が9歳か10歳のときにアナフィラキシーショックで死にかけたエピソードを書いてみようと思います。自分ドルオタだしそんな病気興味ないよ、という読者さまはどうぞ次の一文だけお読みくださいませ。

「うかつに推しにアレルゲン差し入れたら、死ぬレベルの苦痛を味わわせる可能性があるから、差し入れには細心の注意を払いましょう」はい以上。

 


…で、この段落を読み始めてくださる方いらっしゃるのかな。

まず私は決して「アレルギー体質」ではありません。幼少期に、いわゆる除去食なるものを食べたことはありません。強いて言えば「とっても軽い海老アレルギー」があります。

で、この「とっても軽い海老アレルギー」なのですが、「生の海老を食べるとちょっと蕁麻疹が出る」程度。本当に「ちょっと」、うっすら体が赤くなるかな?というレベルですし、痒いことは痒いけど、掻きむしるレベルではありません。薬を飲めばすぐに引きますので、海老をよけて食べることはありませんでした。

そんな私でも、アナフィラキシーショックを起こしました。

なぜその日に限って発症してしまったのかは分かりません。確かにその日は勉強と自由研究を頑張ってとても疲れていたし、両親が遅くまで出かけていたので、祖父母の言うことをしっかり聞いていい子で待っていなければ…という緊張、ストレスもあったのかもしれません。それから、体調を崩して微熱が出ていました。思い当たることは色々ありますが、「これがいけなかった」という明確な根拠はありません。

海老を食べたのが夜の7時頃。そのままお風呂に入って就寝し、夜中の12時頃に物凄い腹痛で飛び起きました。

子供なら原因のよく分からない腹痛など、何度も経験することだと思います。そのような経験を踏まえても、「これは何かがおかしい!」と気づくレベルの腹痛でした。胃袋を鋭利なナイフで切り裂かれるような激しい腹痛で、どんなに我慢しようとしても呻き声が漏れてくるレベルです。よくテレビの出産シーンなどで、「陣痛で絶叫する」という場面がありますが、声すら満足に上げられないような痛みでした。絶叫できていればその場で親が駆けつけてくれたかもしれないのに…と今なら思います。

時を同じくして、全身に蕁麻疹が出てきました。誇張ではなく「全身」に、おびただしい量の蕁麻疹が出て、どんなに引っ掻いても引っ掻いてもきりがない。爪が足りない。

このあたりでなんとか電気をつけて愕然としました。通常蕁麻疹とは、正常な皮膚の中に飛び飛びに現れることが多いのですが、その時は全身が蕁麻疹で覆われ、正常な皮膚など一ヶ所も残っていませんでした。その上、一番重点的に引っ掻いていた両脚の皮膚は無残に破れ、ぼろぼろになって流血し、白いシーツが血まみれになっていました。これだけ流血するほど肌を傷めれば、普通なら「痛い」という気持ちが生まれるはずです。しかし、全身を覆う凄まじい「痒さ」が、痛みを感じる能力すら私から奪っていったようでした。

これはまずい、親を呼ばないと、と思いましたが、ここでアナフィラキシーショックで一番恐ろしいと思っている症状・血圧低下が起こりました。たしか30くらいまで落ちたでしょうか?意識が朦朧としたおかげか、「死ぬかもしれない」とか、「とんでもない病気かもしれない」という恐怖はありませんでした。こればっかりは不幸中の幸いです。

意識が低下したせいか、全身に力が入らず、歩けなくなりました。これは甚だ妙な感覚でした。私は脚を骨折したことがありますが、あの時の「脚が痛いから歩けない」「脚がうまく動かないから歩けない」という「歩けない」とは、まったく違う感覚だったのです。この脚は骨も腱も健常なのだから歩ける、ということは分かりますし、歩こうという命令が脳から発動されているのも分かります。しかし、どうしても力が入らず、目の前のボロボロの脚が、まるで人形のものであるかのような、少なくとも自分のものではないかのような気持ちになりました。

もちろん脚だけではなく全身に力が入らず、這っていこうにもなかなか前に進めません。布団の外に寝転ぶなんてお行儀が悪い、そんなことしてはいけない、そう頭では分かっているのに、冷たい床にべったりと体を押し付けていることが気持ちいい、これ以外の行動はできない、と思ったまま、思考が混沌としてしまう。それでも何度か親を呼び続ける努力をすることで、ますます体力は消耗しました。私は小学生にもなって注射が大嫌いだったのですが、病院に連れて行ってほしい、注射でも点滴でも何でも受けるから、と言い残していよいよ本当に意識を失いました。その後すぐ救急車が来たようです。

病院で点滴を打ったところ意識が戻り、蕁麻疹もあらかた引いてきたので、入院はせず家に戻りました。それでもまだ全身にしつこく痒さは残り、意識もはっきりせずうすぼんやりとしたまま、寝ているしかありませんでした。その後2、3日はどこか意識がふわふわしているようで、勉強も自由研究も、何もできませんでした。


で、何が言いたいかと言うと。

私は「アレルギーを持っている」という自覚すらないレベルのライトなアレルギー持ちでした。今でもアレルギー検査をしても、海老に対する反応は「軽度」であると言われます。にも関わらず、こうしたショック症状が出る危険性はあります。

だからこそ私は、推しも軽度の海老アレルギーを公表している以上、絶対に海老を使った差し入れはしません。以前笹巻寿司を差し入れたことがありましたが、「重度の(もうこの際嘘言ってもバチは当たらないでしょう)アレルギーを持つ方がいらっしゃるから」と、海老のお寿司を入れないことはもちろん、同じまな板すら使わないように、その日は海老のお寿司を握る前に、推しに差し入れる予定のお寿司を握るようにお願いしました。更に、まったく同じ条件で握っていただいたお寿司を、まず私が試食して、僅かな蕁麻疹でも出ないことを確認しました。

万が一、推しにアナフィラキシーショックが起こったらどうなるのか。まず、上記のようなたいへんな苦しみを味わうのはもちろんのこと。私は夏休み中の小学生でしたから特に生活に支障は出ませんでしたが、人さまの前に出る職業をされている方ですと、より被害が大きくなると思います。

まず、3日くらいはお仕事を休んで、自宅療養あるいは入院をしていなければならないでしょう。蕁麻疹で全身が無残に腫れあがりますが、これが完全に引いて綺麗な肌に戻るにも3、4日かかりました。その間、お仕事どころかツイッターに上げる自撮りすらできないでしょう。

更に、私の推しは一人暮らしをされていると公表されています。私は両親と暮らす子供でしたから、すぐに異変に気付いてもらい、病院に運んでもらい、その後看病してもらえるという、たいへん恵まれた立場でした。アナフィラキシーショックは意識低下、失神をする可能性が高いです。一つ屋根の下に家族がおらず、救急車を呼ぶ前に意識を失ってしまったら、そのまま脱水症状、吐瀉物による気道閉塞などで死んでしまう可能性も高いです。

そしてもし、差し入れによってアイドルがショック症状を起こしたら、おそらく9割のマネージャーは再発防止策として「食べ物の差し入れ一切禁止」を発表するのではないでしょうか。もちろん、推しが安全であるに越したことはありません。しかし、推しに差し入れをすること、というより差し入れの品をあれこれ悩んで選ぶことが好きな私にとって、もしこのような策を講じられたら、率直に言って寂しいです。


長くなりましたが、推しのアレルギー情報は、可能な限りおさえておくべきだと思います。推しのブログで「アレルギー」と検索をかければ、情報が出てくる可能性があります。また、接触ができる方であれば、なるべく聞いておきたいところです。というより全てのアイドルは、ファンレターの送り先のようにアレルゲンを必ず公表していただきたい、という思いもあります。でもそれだと、アンチが敢えて混入する可能性などもあるから難しいのでしょうか…?